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入院体験記

入院体験記 その9

翌朝、目を覚ますとまだ病室が暗い。いつもそうするように、iPhoneのスリープボタンを押す。4時50分。なるほど、眠剤が切れたらしい。もう一度眠ろうとするが、できない。無理やり眠るための薬の効き目が終わってしまったのだから、当然といえば当然か。…

入院体験記 その8

前回は個人的見解を述べて記事を結んだが、今思うと浅慮であったかと思う。医学的判断については医師に任せる他ないし、専門外を語るには断定的すぎる語り口だったように思う。読者諸君についても薬の服用・中止については医師と相談してほしい。ただし、前…

入院体験記 その7

その夜から、現在出ている症状に対する治療が始まった。「ステロイドパルス」と呼ばれる治療で、点滴によってステロイド(副腎皮質ホルモン、免疫機能を抑制する)を3日ほど大量に投与し、免疫が脳細胞を攻撃するのを止めるというものだ。免疫の暴走が収まり、…

入院体験記 その6

病床で迎える2度目の朝。起き抜けに視界に入る、ただただ白い天井には、10cmほどの直径でゆるやかに、くるくると二回巻いた鈎が二等辺三角形を描いて配置されている。判然としない意識でそれを眺めつつ、何に使うのか考えていた。機材やら点滴やらを吊るすの…

入院体験記 その5

翌朝、午前8時頃に配膳の声で眼を覚ます。どこに行ってもまずいと言われる病院食だが、こここの病院食は私はそれほど嫌いではなかった。出汁や胡麻、レモン汁をうまく使って、減塩しつつも美味しく食べやすくしようという配慮を感じた。という訳で、毎日の食…

入院体験記 その4

意地だけで動いて己の尊厳を守り、半死半生のまま先輩社員の車で病院に戻る。病棟玄関から先は一人で荷物を運んだ。 終業時間が終わってから、河田課長(②参照、直属の上司)、三好課長(労務担当)が病院に来て面談したような気がする。ろくすっぽ医師から話を…

入院体験記 その3

翌朝起きてみると、聴覚は完全に元に戻ったものの、視界の異常の密度が濃くなり、いよいよ堪え難いものとなっていた。顔面の感覚もである。顔を洗い、タオルで拭うと、右側だけビリビリと後をひく。しかし、これをどう上司に報告すればいいのかわからないの…

入院体験記 その2

インパクト重視で「頭がおかしくなって入院した」という、語弊がありそうなタイトルにしたが、「頭がおかしい」というフレーズに侮蔑的な印象を受ける読者も居るだろうから、以後タイトルを真っ当なものにする。 翌朝。起きてすぐ違和感。 視界が汚れている…

頭がおかしくなって入院した(入院体験記 その1)

頭がおかしくなっていたから入院した。 2ヶ月ばかり前のことだから、思い出しつつ書く。 私はしがない新入社員だ。仕事は然程忙しくない。人件費削減のためか、毎日定時には帰らされていた。残業手当がつかないので稼ぎは少ないが、自由時間が多く、ほかの同…