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「シドニアの騎士 あいつむぐほし」

サブスクで友人と観た(watch party)。

真面目に見ると25点、ツッコミながらなら80点、加点のみなら1000点のアニメ。

はじめに

加点ポイント

  • 戦闘シーンの映像(+50)
  • 迫力の音響(+50)
  • 新型衛人(+100)
  • 観ればわかる例のシーン(+800)

減点ポイント

  • 説明台詞の多さ
  • 先の読める展開
  • ラブストーリー部分の茶番感
  • 必要性を感じない新キャラ
  • 補完されてますます意味不明になった科学者落合

好き

戦闘シーンはかっこいい。映像も進化している。音響は語るまでもない。

説明台詞の多さ、先の読める展開は減点ポイントに入れたが、友達と同時視聴する分には草を生やせていい。わけのわからないことが起こるとブリッジクルーか纈が説明してくれるし、フラグは必ず回収される。台詞の9割近くはいつか聞いたことのあるフレーズで構成されているので、アニメファンなら笑顔になる。

新型衛人はかっこいいし、例のシーンはさすがに熱すぎる。わかる人ならあれだけで満足。

勢威さん大好き。

いまいち

王道の展開をなぞりつつも、魅力的なガジェットや物理学に忠実な描写(加速で構造物が壊れる、燃料を節約するために噴射を最小限にする、水に浮くために衛人の脚部に付けるフロートがやたら大きいetc)が魅力的な原作だったが、本作はいろいろ説得力に欠けた。私が思うに二瓶勉らしさはディティールに宿っているのだが、本作はテンポを重視しすぎて細部に目を向ける余裕がなく、説明台詞がないとピンとこないものが多すぎる。

新キャラの若い操縦士の必要性が皆無。彼らによって物語に奥行きができたかというとそんなこともない。シドニア男性陣からの人気No.1である市ヶ谷テルル(CV:田村ゆかり)に尺を回してほしかった(彼女のエピソードをやるには作品自体の尺が足りなかったのだろうが)。

つむぎとのラブストーリーは個人の好みか。

海苔はもっと活躍させてもよかった気がする(ブランクがあるので当然といえば当然という二瓶勉的リアリティなのか)。

何より問題なのは科学者落合の自己満コミュ障ぶりで、もったいぶらないで小林に計画の全容を話していればよかったと思わずにはいられない。落合が大暴れしてたくさん人を殺した理由が(人類の敵ムーブをする理由が)よくわからない。小林にかまってほしいのか?

「ガウナとの対話の可能性/シュガフ船の情報の継承」と「(共同体としての)人類種の存続」が必ずしもトレードオフとは考えられない。なんなら落合と小林が協力して、シュガフ船を残したままシドニアを安全圏まで退避させてやり、落合は研究を続行すればよかったと思う。落合(とララァ)にはあてどない時間が残っているわけだから……。

総評

つむぎと長風のラブストーリーに尺をとるためか、台詞もモノローグもやたら親切に視聴者に説明してくれて不自然さが目立つ。原作は作者の「こんなヒロイン良くない?」「こんな展開好きでしょ?」を詰め込みつつも、ロボットアニメのお約束をあえて外したり説得力のある理由付けをしたりすることで、娯楽的面白さと知的好奇心を同時に満足させうる作品だった。ところがこの劇場版は、テンポを重視した結果SFのSがかなりスポイルされ、結果的にどっかで見た展開、どっかで聞いたフレーズのパッチワークとなっていて、目新しさのほとんどない、これまでに築かれたモチーフを消費するだけの作品となっている。調理の仕方次第ではロボットアニメ界の「シン・ゴジラ」的な、ジャンルを解体・再構成する作品になりえただけに、アニメでそれが行われなかったことが個人的には残念。

ストーリーと脚本の整合性の観点からは、落合と小林艦長の行動の脈絡のなさ、軽率さが致命的。

それでも声優の熱演、戦闘シーンの迫力、例のシーンはかなりいい。