無選別

訳ありの記事がお手頃で

入院体験記 その7

その夜から、現在出ている症状に対する治療が始まった。「ステロイドパルス」と呼ばれる治療で、点滴によってステロイド(副腎皮質ホルモン、免疫機能を抑制する)を3日ほど大量に投与し、免疫が脳細胞を攻撃するのを止めるというものだ。免疫の暴走が収まり、私の自己修復のスピードが免疫が脳を損傷するスピードを上回れば、病変は小さくなるということだと理解した。

ステロイドには、副作用として「不眠症、多幸症、うつ病」「体温が上がる」等がある。(リンク:ステロイド治療)治療開始から私の体温は37.8°前後まで上がり、12月だというのに就寝時は氷枕を敷かざるを得なかった。ただでさえ絶え間ない顔面の違和感、視界の異常で気が散って寝にくいのに、体温も上がり、訳もわからず興奮するとなるともう眠れるわけがない。一睡もできなかった。

治療中はひたすら横になって2日過ごした。入院していれば毎日処置、検査があるものと思っていたが、そんなことはない。医師も土日祝日は休みだからだ。当然である。私はそんなことも気づかず、病棟はシフト制で、いつも一人以上医師が待機しているのでは、などと勝手極まる想像をしていた。

2日目以降、あまりにも眠れないために眠剤を貰って眠りに就いた。

「薬を飲んで寝る」という行為について、薬無しで寝ることが困難になりそうでなんとなく忌避していたが、この状況下ではむしろ痩せ我慢した方が身体に毒だっただろう。寝ようとしても寝られないし、起きていれば陰鬱な思考に引き摺られてますます眠れなくなる。「薬に頼りがちになる」という、あるかもわからない弊を避けるため、不眠、苛立ちという確かな困難を引き受けるというのは割に合わないのではなかろうか。これは個人的な意見だが、自分の責任でない苦難をやり過ごすためのハードルを上げても、精神的たくましさも、達成感も、称賛も、何一つ得るものは無い。従って、病気という状況では、与えられるものは我慢せず利用した方がいいんじゃないかと思う。