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入院体験記 その8

前回は個人的見解を述べて記事を結んだが、今思うと浅慮であったかと思う。医学的判断については医師に任せる他ないし、専門外を語るには断定的すぎる語り口だったように思う。読者諸君についても薬の服用・中止については医師と相談してほしい。ただし、前提としての「違和感があれば病院に行け」というスタンスは決して譲らない。

このブログの連載は「体調不良と馬鹿にすると案外重病なこともあるぞ、不調ならとにかく病院に行け」と脅すこと、それと文章を書いて発表して喜びを得ることが目当てである。読者諸君に「普通に過ごせる幸福を噛み締めろ」と、下を見て得られる薄ら寒い満足感を与えたいわけでも、「私こんなに苦労してます! 応援して!」と不幸自慢をして同情を買いたい訳でもない(言い訳がましいが、できる限り感傷的にならない記述を心がけているつもりだ)。

杞憂しながら過ごすよりはあっけらかんと毎日を過ごしてしていた方が本人も周囲も幸せだろうから、来るかもわからない不幸に怯えたり、不幸が待ち構えている前提で過ごして欲しくはない。だから、ちょっと不調のある人が「こんなこともあるんだ……怖いな……病院行こ……」くらいの感想を持ってくれるのが私としては一番喜ばしいし、開設者冥利に尽きるというものである。

とにかく、五感に違和感を覚えたなら病院に行って欲しい。

 

さて、持論を垂れ流すのは程々に、入院の記録に戻った方が良いだろう。

前日23時頃に貰った眠剤がバッチリ効いたのか、目が覚めたのは8時過ぎだった。ベッド脇の机には既に膳が置かれており、判然としない意識で箸を操る。ところで、再三述べているように、顔の右半分の感覚がおかしくなっている。違和感は口の中も例外でなく、歯茎にかかる圧など、自分の歯の噛み合わせの感覚と現実の歯の位置の整合が取れず、よく口の中を噛む。また、口蓋の触感も厚い皮一枚隔てたようになっているため、咀嚼した米の食感が、慣れ親しんだ我らが主食とは違う、得体の知れないものに感じられる。妙にべたべたと口に残る、水っぽい餅のような……味覚が問題なくとも、食感をまともに感じられないだけで食事体験の満足感はかなり落ちるということを知った。

 

週末なので、やはり検査は無い。ステロイドの点滴だけは継続していた。点滴の管をつけられ、スマホ例の遊びに耽っていたところ、三好課長が見舞いに来て、デパートのお菓子を差し入れてくれた。休日に来てくれるなんて情け深い方だな、と思ったら、「スマホを充電させてくれ」と、25分ほど居座っていった。