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入院体験記 その2

インパクト重視で「頭がおかしくなって入院した」という、語弊がありそうなタイトルにしたが、「頭がおかしい」というフレーズに侮蔑的な印象を受ける読者も居るだろうから、以後タイトルを真っ当なものにする。

 

翌朝。起きてすぐ違和感。

視界が汚れている。色付きの砂嵐とか、赤だの青だのの模様を適当に塗ったフィルターを重ねた状態、と言ってイメージできるだろうか? 色がまだらに変化しているのだ。

やはり右目がおかしいのかと思い左目、右目、と交互に閉じてみて、新たな異変に気付く。左右で反応が全く違う。感覚が鈍い。右目の周りがしもやけの指や正座し続けた後の足のような感覚。皮がとても厚くなったような感じだ。鏡を見て確認したところ、おかしいのは触覚だけで動きに問題はない。

それだけではない。左耳の聞こえも悪い。

少なくとも寝不足による不調という類のものではないなというのは察したが「だから休みます」と言う訳にもいかず(首から下は一切問題ないため、仕事はできそうであった)、いつも通り出勤した。

 

出勤すると昨日の先輩社員(以後山本さんとしよう)が「頭痛いの治った?」と聞いてきたので、私は憚ることなく今朝からの不調について説明した。山本さんは「やばそうだったら勤務時間でも病院行っていいからな」とまで言ってくれた。とにかく、病院が開く時間までは業務をしようとデスクに向かう。

しかしながら、相変わらず視界はおかしい。ぼやけるでも二重に見えるでもなく、色がついて見えるというのはなんとも説明し難い。耳も聞こえにくいし、口元も突っ張っているような、腫れているような感覚がある。仕事をしながらも、それらの違和感が気がかりでまるで集中できない。山本さんの提言で、診療科を決めるべく、症状をキーワードに検索をかけたところ、「顔面神経麻痺」が症状に近かったため、耳鼻科を受診することにした。

落ちきったパフォーマンスで午前10時頃まで業務をこなし、山本さんに病院に行く旨を伝えると、山本さんは「もう俺から河田課長に連絡しておく、いいから行け」と送り出してくれた。が、背後から「お前仕事中だろ、ナメとんのか」と水を差される。他部署の村上さんである。まあ、仕事中に抜け出すのは良くないのだろう。一般的には。村上さんが離席した隙に、山本さんがいいから行けというので私はオフィスを後にした。エレベーターで村上さんと一緒になり、「お前病院行くのか、今回は誰も居なかったからいいが、うちの部署の上長がいる時は絶対行くなよ」と言われた。

 

耳鼻科では顔を触る検査、顔を動かす検査、聴力検査を受けた。が、どれも異常なし。「顔がちゃんと動かせてるので顔面神経麻痺ではありませんね、異常があればまた来て下さい」とのことだった。別の科に紹介とかしてくれても、と思ったが、仕方なくオフィスに引き返した。

 

オフィスに戻ると、河田課長に電話をしろとのメモ書きがあった。電話し、診断結果を伝えたところ、午前休扱いにする必要ないと伝えられた。パフォーマンスは依然最低だったが、一応定時まで働く。外回りから帰ってきた村上さんに病院の結果を尋ねられ「何もわかりませんでした」と答えたところ、「目がおかしいくらい大丈夫だ、頑張れよ」と言われた。

 

退社後、昨日通院を忘れた皮膚科に向かった。何か変わったことはないかと聞かれたので、今回の症状を伝えたところ、緑内障を疑われる。ネットで調べたところ、視野の異常はたしかに良く似ているし、頭痛から始まるのもその通りだったため、次は眼科を受診することにした。

帰りにラーメン屋に寄ったら、隣のおばちゃんが餃子一人前から一個だけ食べて、残りを全部くれた。